ガーゼに埋もれて。

ガーゼの山

 4月1日づけで大幅な人事異動を行った当施設は、各通所者さんごとの担当介護士も変わり、従来通りの業務にも、若干の滞りがみられます。これまでの担当さんに指導して行っていただいてきた事が、明らかにおろそかになっている。 例えば、肝心のマウスケアが出来ていない。食事に使うスプーン(OTさんが患者さんに合わせて手作りしたスプーンが無視されている)。など、数えればキリがないのですが。。。きっと、申し送りがスムーズに行っていない事と、摂食・嚥下やその他に対する、意識の違いからくるものなのでしょう。
 かといって、STとして、その状態を黙認するわけにはいかず、カルテに記載してみたり、直接話したり、影響力のありそうな人に言ってみたり・・・と策は練っていたのですが、なかなか改善される様子はありません。新しい人事になって、まだ数日なので仕方がないとは思うのです。なぜなら、介護する側も人間なので、急な職場環境の変化には戸惑いがあると思うのです、でも、ST(医療職)としての葛藤が。。。
 今後は、実施表を作って、確実に実施してもらえるようにセッティングしたり、手技の指導と、それを確認できるマニュアル作り、実際やってみての確認作業のためのコミュニケーションをとる事などを考えていますが。。。ちょっと、心配。


 最近入所された方で、ペグつきの方がおられるのですが、口腔内の環境が良くなく、マウスケアでだいぶ改善が見られていた入所者さんがいました。舌苔と痰の塊がこびりつき、口臭がひどい状態で入所されたのですが、密な口腔ケアでだいぶ改善され、認知面もかなり改善し、そろそろ、水のみテストやRSSTに入れるかな?と思っていたのですが、あっという間に舌苔の山。。。数日の間に。さらに、ベッドサイドに用意してあるはずの、清拭用のガーゼも殺菌用の水もない。口腔ケアはほとんどされていないのかも・・・?という状態。


 と、いうわけで、帰宅後はガーゼたたみ(ガーゼ折り)作業を実施。忙しくて手が回らないなら、私が用意する!!と。


 以前勤めていた急性期病院では、清拭用のガーゼは既に折って、丁度良いサイズに切り分けてあるタイプだったのですが、今の勤務先は30㌢×10㍍の未処理ガーゼ。切り分けて、手作業で折っていきます。結構、手間がかかります。細々としたことで忙しい介護さんの業務では、やはり難しいのかな?少しずつ慣れて、日常業務に盛り込んでもらえるといいなぁ・・・と思いつつ、セコセコ折り続けました。とりあえず、20㍍分。本当は、アイススティックも作りたかったのですが、そこまでは手が回らなかった!明日出勤したら、作ろうと思います。


 介護保険も改定になって、ST業務も介護保険の範囲内で出来る事が増えてきたようだし、少しずつ、取り組んでいけたらな・・・と思います。

唱歌@古い歌がわからない時に。

ST業務で役立ちそうなサイトを見つけたのでご紹介します。
唱歌の時間などで使うと便利そうですよ♪↓↓↓

ふくちゃんの音楽室

主旋律と伴奏がMIDIファイルで豊富にあります。
少しテンポが速いのですが、フリーソフトでちょっといじれば、問題なく使えそうです♪
実際、私自身、明治・大正の歌の項目で「籠の鳥」を覚えました。おばあちゃま方の口伝に聞いていたのですが、それだけじゃ覚え切れませんもんね。

第8回言語聴覚士国家試験★合格発表

本日14時、第8回言語聴覚士国家試験の合格発表がありました。


厚生労働省の発表は以下のURLから見ることが出来ます。受験地を都道府県別にクリックして番号を照会します。
第8回言語聴覚士国家試験合格速報


↓合格率は財団法人医療研修財団のPMETにて掲示されていました。試験問題の回答例もpdfで掲載されているので、今後の勉強に良いかもしれないですね。
標記国家試験の合格者数

花見の季節です。

春

 お花見の季節ですね。私の住む人吉球磨地方の桜はもう満開!ご利用者さんたちも、昨日お花見を済ませ、すっかり春の雰囲気が漂っています。
 ところで、この地域では春の突風が強烈らしく、今日もゴーゴーとものすごい音が鳴り響いていました。桜が丸裸になってしまうのでは?と心配してしまうくらいの突風です。どうやら、偏西風の影響らしいのですが、まだ慣れない私には驚きです。昨日も【花見会】と称して、入所者様たちのイベントがあったのですが、風の強さを考え、食事は室内で摂られたそうです。折角なので、小春日和の青空の下で、美味しい食事を召し上がって欲しかったのですが、この風は、ご高齢の方々には厳しいものがありますね。体調管理が一番。


 ところで、3月末〜4月のこの時期は、人事異動のシーズンですね。職員の移動や退職・新規雇用はもちろん、設備の変化や方針の改正など、様々な変化がある季節です。
 当施設も、例に漏れず様々な変化があります。平成2005年度の新施設長の就任からは変化が大きく、2006年度は人事を含めた大改革が施工されることになりました。大掛かりな改革なので、人事は思い切りシャッフルされ、本当に4月(明後日)から、日常業務が回っていくのかが心配です。新しい責任者への申し送りはもちろん、今日、評価したPt.の評価結果と今後の方針をどこにどう伝えて良いか、それぞれの責任と気持ちを配慮した伝達を考慮すると、手間取る作業が多いように思います。
 春は変化の季節。様々な意味での変化があり、5月病などともてはやされる季節にもなりますが、気持ちを引き締めて、前進していきたいと思います。

急性期・回復期STと老健STの葛藤。

 先日、施設長のDr.であるA先生と話していた時、見解の相違を再認識した。これは、勤め始めてからずっと心にある葛藤なのだけれど、まだ割り切って考えられないのだ。地域性なのか、施設の役割が違うからなのか、そこさえも曖昧。というわけで、文章で整理して考えていきたいと思う。


 私が過去の数年間、勤めてきたのは急性期の総合病院だった。まだ容態は安定してないICUから介入し、急速な回復の経過を共に歩むリハビリだ。もちろん、亡くなる方もいらっしゃるし、高齢な方だと状態が悪化する場合もある。しかし、その状態ではリハビリは出来ないので、オーダーが出ることはない。
 ところが、現在の職場は介護老人保健施設(老健)だ。ご利用者は、容態の安定してきた高齢者が多い。終末期を看取る事もある。人間の一生のサイクルの中での、最後の部分に携わる職場だと思っている。人間も生物なので、必ず死は訪れるのだが、気力はもちろん、体力も落ちていく姿と向き合うのは、辛い。生活そのもの(衣食住)と密な関係にある「家庭」としての役割を担う施設だからなのだろうと思う。
 そんな中で、今出来ることを継続して出来るようにという「機能の維持」「生命(生活)の質の向上(QOLの向上)」を目的として訓練をするのが、リハビリ職の役割だと考えている。けれども、ここは「特別養護老人ホーム」ではなく「老人保健施設」なのだから、「家庭復帰」できる可能性もある施設だ。そう考えると、「機能の向上」についても、リハの重要な役割として考えていかなくてはならないと思う。


 A先生は小児科医で、総合病院でバリバリやってきた人だ。特に対象者が発達途上の小児ということで、その回復はめまぐるしい。発達そのものはゆっくりだが、確実に出来る事が増えていく事の方が多いので、沢山の喜びを共有できるし、充実感がある。
 それと比較してはいけないのだが、やはり高齢者と小児は違う。A先生は、今まで携わってきた仕事との差に、戸惑ってしまうと仰っていた。確かにその通りだと思う。私も少なからず小児とも接してきたし、気持ちはよく分かる。


 先日、胃ろうを造設した女性Kさん(ST依頼の件でトラブった入所者さん)が入所された。A先生いわく、ご家族内での意見の相違があり、入所に関しても、施設長として気をつかう事が多い方なのだそうだ。
 Kさんは、もともと併設の医院に入院されていた方で、かなり危ないところを助かった方だ。危険な状態になった時、息子さんは「どうしても生きていて欲しい!」と希望され、病院側も精一杯の処置をして、一命をとりとめた。しかしお嫁さんは「どうして助けたの!」と嘆くのだそうだ。寝たきりになって意識もハッキリしないなら、そのまま逝かせて欲しかったと。どちらの気持ちもよく分かる。
 この話をしながら、A先生は言った。


 「ペグ(胃ろう)まで刺して、生きるのはおかしい」
 「衰えていく人をみるのはつらい」


 「生きる」ということの価値観は、人それぞれなので、色々な意見があっていい。身動きが取れなかったり、意識レベルや認知能力の問題で「自分」が「自分」でなくなるなら、死んだほうがいい。そう思う人もいれば、自分が生きている事で家族の気持ちが救われるなら生きたい!と願う人もいる。安楽死の問題も、生と死の価値観の違いから倫理を問われ続けているのだろうし。
 ただ、そのあとの言葉がとてもとても心に刺さった。


 「ここは老健だから、改善はしない」
 そんな内容だった。


 Dr.はそう言ったが、Kさんの意識レベルは、入所当時に比べて改善してきている。もちろん、重傷度は高いので発語はないが、声かけに反応がみられるようになったのだ。口腔内の状態も改善方向で、肺炎のリスクも減ってきた。少しでも、良い状態で生きていけるように、それが私の仕事だ。他のリハ対象者についても、維持できるように、少しでも出来る事が増えるように、そう思ってリハビリをしている。出来うる術を尽くして、それでも機能が落ちるのは否めないが、手を尽くす前に言うのはどうなのだろう。私自身、過度な期待はしていない。だけど、、、言われた。
 「mahoちゃん、ここは病院じゃないから改善はしないよ」という言葉に、この地域のDr.の考え方をみた気がした。それでは、何のためのリハビリなのだろう?


 昨年10月の介護保険制度の改正で、栄養ケアの側面が重視されるようになった。これは、低栄養のリスクを軽減するために「口から食べる」ことの訓練=摂食嚥下訓練の重要性を全国的に認知されたと考えることが出来る。これだけ、認識が高まっているにも関わらず、訓練による可能性を否定されてしまうと、本当にどうして良いのか分からなくなる。
 確かに、高齢の方の訓練とその効果に関しては、難しいと思う。落胆することもある。けれども、ご本人の利益となる可能性には、前向きに取り組むべきだと思う。


 日々葛藤。
 先生も、葛藤しているんだろう。

続・依頼の流れの問題。

 久々に出ました。依頼箋の流れによる問題。最近は個々に細心の注意をしながら仕事をしてきたつもりだったんだけど、ダメね。これは、なかなか難しい問題だという事を再確認する出来事だった。
 要は、以前から抱えている問題が再燃しただけなので、問題点はあまり変わっていない。指示系統の流れの滞りが、問題を悪化させているだけだと思う。もう少し、要領の良い具体案が作れれば良いのだけど。


 内容はこうだ。


 STの摂食嚥下への介入が必要と考えられる、ペグ&尿カテつきの方が入所された。口腔内の状態は悪く、積極的なマウスケアが必要と考えられ、看護・介護の立場としては、適切な処置を取りたいと考えた。ご本人の為にも、早急に。でも、一連の流れを通していては、なかなか指導はもらえない。少しでも、出来ることを早めにしたい!と考えた。で、依頼が正式に決まる前に、マウスケアの方法だけでも、教えてもらおうとしたのだ。
 もちろん、心意気に賛同した私は、「こういう状態なら、こういうマウスケアをすると良いよ」と口頭で教える。でも、現場の声が届いていないのか、依頼が出される気配は一向にない。それでも、何度も相談を受けるので「このままではいけない!」と思った私は、リハ課長に「こういう状態なので、依頼を出して下さい」と、再度お願いした。課長は、その日のうちにDr.に通し、GOサインを貰った。


 何が問題になったのかというと、次の2点だ。

  1. 依頼の流れが数足跳びだったこと。
  2. Dr.が診察する前だったので、Dr.自身が必要性を判断していないのに、現場が勝手に動いてしまったこと。

 うちの施設の場合、ここでの流れは、

  現場→主任→Dr.→リハ課長→ST

 というのが規則。ところが、このケースでは、

  現場&主任→ST(ここで介入が始まる)→リハ課長→Dr.→リハ課長→ST

 と、なってしまった。今回の場合、リスクを伴う行為ではない。けれども、結果的に、責任の所在がハッキリしないまま、ケアがなされることを助長する行為になるのだ。万が一、事故があった場合は、施設全体が状況を把握できていないまま、右往左往する事になる。それは、ご利用者にとっても良くない。


 そこまで分かっていて、何故何度も間違った流れを作ってしまうのか。
 それは、指示系統の対応の遅さにあると思う。


 結局、常に現場にいるのは介護・看護スタッフで、現状をよく理解している。問題点に直面するのは現場だ。ただ流れ作業で仕事をしている人なら、何も気づかないかもしれない。ところが、この施設のスタッフは、意欲の塊のような方々なので、常に真剣。疑問も問題点も、見て見ぬフリはできない性質で、現状をより良くしたいと真剣に願っている。それは、とても良い事で、ご利用者の利益に直結するはず。。。でも、フライングだ。
 結局は、意見や指示が迅速に通る環境設定が必要だと、私は思っている。もちろん、ささやかな意見も声としてあげるが、なかなか。


 私がこの状況で懸念しているのは、「STに直接相談してはいけない」とスタッフが考えてしまうことだ。STが遠い存在(近寄りがたい特別な職種)になる事によって、疑問や問題、ちょっとした質問が出来ないまま、間違ったケアを続けてしまう事が一番の心配なのだ。
 以前、指示を3ヶ月放置された事件があった。その時に当事者が言っていたことに「STに直接話せないから、放置した」とあったからだ。正直、ただの言い訳だと思う。しかし、全体がこういう雰囲気になってしまった場合、ケアの質は最悪な状態になってしまうと思う。


 今後、今回のような事件を起こさないためには、

  1. 必要な処置に対して、迅速な対応が出来るシステムを作ること
  2. STも交えた勉強会やミーティングなどを定期的に行い、現場の素直な意見を出せる機会を設ける(増やす)こと。

 が必要だと思う。時間や人手の制約がある中では、なかなか取り入れ難い現状なのは確かだ。だけど、施設全体(私自身も含む)が持っている熱意を、良い方向に向けるために、今後も頑張りたいと思う。

女王さま。

今日はご利用者のオモシロネタを一つ。


80歳位の男性入所者Nさんは、なかなか素敵なキャラクターでして。
私の大好きなおじいちゃんなのです!


ある日、ホールで立位保持exs.をしていたNさんは、近寄ってきた介護職の女性におもむろに声をかけられました。


「Nさん!こんにちは。私は誰?」
「女王様」
「リハビリのご褒美に何が欲しいんでしたっけ?」
「キス!」
「じゃあ、リハビリ頑張ってくださいね!」
「はい!」




女王様キスですと!? ドキドキドキドキ
・・・そんな衝撃的な出会いでした。


以前からいるスタッフたちは、もちろん慣れっこなワケで、さして動揺しません。
試しに他の女性職員に対して「この人誰?」と伺ってみました。ほとんどは「この人は違う」と答えてくださいます。たまに、私も「女王様」になってたけど、ちょっとした間違いなんだろうな(笑)


先日、女王様に貰うご褒美を尋ねたら「スニーカー!」と仰ってました。不意を突かれて爆笑。早速、女王様に報告したら「買ってこないといけないかしら〜」と真剣に悩んでました。


今日はたまたま医院の診察を受けた妹が遊びに来ていたので、リハ終了後に「こんにちは」と手を握りました。即座に、「にま〜♪」と、ご満悦の表情。いくつになっても、女性が好きなんだなー、と、人間の本能の強さを感じてしまいます。


ちなみに、Nさんの私の呼び名は「ねーちゃーん!」です。彼の視界に入るとすぐに「来てくだ〜い」と呼ばれます。少し寂しいのかも知れないな?と合間をみてはお話している日々です。